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連絡がしつこい人、かまってほしいタイプの人とうまく距離をとるには?

  • 2024年2月28日
  • 読了時間: 30分

更新日:4月14日

監修:公認心理師・臨床心理士・博士(教育学)東北大学大学院教育学研究科 臨床心理学コース修了

 

最終更新日:2025年4月


【免責事項】 本記事は一般的な情報提供・教育目的で執筆されたものであり、医療・心理的診断や治療を目的としたものではありません。個別の状況については必ず公認心理師・臨床心理士・精神科医などの専門家にご相談ください。本記事の情報を根拠に特定の判断・行動をとることで生じたいかなる損害についても、執筆者は責任を負いかねます。

【専門家への相談推奨】 相手の言動があまりにも激しく、自分自身の心身に影響が出ている場合は、カウンセリング機関や電話/SNS相談窓口への相談を検討してください。



はじめに:「しつこい人」「かまってほしい人」の問題は、一人で抱え込まないで


 「LINEの返信をしても、しても終わらない」「断っても、断っても連絡が来る」「かまってほしいオーラが強すぎて疲れてしまう」——こうした悩みは、カウンセリングの現場でも非常によく耳にします。


 しつこく連絡をしてくる相手が、見知らぬ人であればブロックや無視で済む話です。ところが現実には、職場の同僚・友人・元交際相手・地域やSNSのコミュニティ仲間など、簡単には縁を切れない相手であることが多く、それが悩みを複雑にしています。


 東北大学大学院で臨床心理学を研究してきた立場から、また多くのクライエント(相談者)の声を聞いてきた臨床家として、この記事ではただ「こう断ればいい」という表面的なテクニックにとどまらず、しつこい連絡やかまってほしい人の臨床心理学的背景、自分がうまく対処できない臨床心理学的背景まで掘り下げて解説します。


 「相手の問題」「自分の問題」それぞれの視点から整理し、最後にはタイプ別の対処法をご提案します。ただし、相手の状態によっては専門家の介入が必要なケースもあることを、はじめにお伝えしておきます。

ぜひ最後までお読みください。


目次

参考文献


第1章:「しつこい人・かまってほしい人」の臨床心理学的背景

 大前提として理解していただきたいのは、しつこく連絡してくる・かまってほしがるという行動は、多くの場合「無神経」や「わがまま」ではなく、深い心理的ニーズの表れであるという点です。


 臨床心理学の観点から見ると、こうした行動の背景は単純ではなく、いくつかの心理的要因が重なっていることがほとんどです。臨床心理士・公認心理師として多くのクライエントと接してきた経験から言えることは、「しつこさ」の背後には必ずその人なりの臨床心理学的メカニズムがあり、それを理解せずに対処法だけを試みても効果は限定的です。

 

1-1. 過度な安心感の追求(Excessive Reassurance Seeking:ERS)

 臨床心理学の観点から見ると、「過度な安心感の追求(Excessive Reassurance Seeking:ERS)」と呼ばれる行動パターンが関連している可能性が考えられます。ERSとは、個人が「自分は愛される価値があり、価値のある人間である」という安心感を執拗に求める、不適応な自己調節行動のことです(Joiner et al., 1992; Joiner et al., 1999)。


 イメージしやすくすると、周囲の人がはじめは、本人を安心させようと関わるのですが、際限のない行動に周囲の人が疲れ安心させることをやめてしまう。最終的には本人を拒絶したことになり、さらに本人のERS行動が強化されるという悪循環です。本記事を読もうと思ったあなたは同じような経験をしているかもしれませんね。


 ERSが人間関係へ悪影響を与えることを示す研究が多々示されています。たとえば、友人関係で悩みやすい思春期の若者では、抑うつ症状を悪化させ、対人関係での拒絶を招く恐れが指摘されています(Clayton et al., 2021)。また、否定的評価への怖さに対して一時的な対処法としてERSが機能しており、短期的な安らぎをもたらしているという側面もあり(Kane et al., 2018)、対人関係において、悪循環になりやすい行動傾向とも言えます。

 

 つまり、相手がしつこく連絡してくる、かまってもらおうとする背景には、相手自身も苦しんでいる可能性があります。この理解が、対処法を考えるうえでの出発点になります。

 

1-2. 愛着スタイル(アタッチメント)

 現代の臨床心理学において、「しつこさ」「かまってほしい」という行動パターンを理解するうえで最も重要な概念の一つが、愛着理論(Attachment Theory)です。Bowlby(1969, 1988)が提唱し、その後多くの研究者によって発展されてきたこの理論は、幼少期の養育者との関係が大人になってからの対人スタイルに深く影響することを示しています。

 

 愛着理論は、人間が対人関係を形成・維持しようとし、苦痛や不安を感じた際にその関係を通じてサポートを求め感情を調整しようとする、本質的な動機に基づいています(Bowlby, 1988)。個人の愛着スタイルは、過去の関係経験の内在化から生じる持続的な対人期待・感情・行動パターンを反映していると概念化されています(Fraley & Shaver, 2000; Shaver & Mikulincer, 2014)。

 

 愛着スタイルの観点から見ると、しつこく関わってくる人の中には、不安型愛着の傾向にあり、この人は自分が不安になったとき助けてくれるだろうかと常に不安で確かめたい傾向にあるからと考えることができます(Mikulincer et al., 2003)。

 

 さらに重要なのは、アタッチメントのタイプによって、ERS行動が出現しやすいタイプがおり、しつこい人・かまってほしい人になっている可能性が考えられるということです(Evraire & Dozois, 2014)。


 つまり、しつこく連絡してくる人の多くは、「関係を壊したい」のではなく、逆に「関係を失いたくない恐怖」から行動している可能性があるのです。

 

1-3. 発達特性(ASD傾向)

 連絡のしつこさや「空気が読めない」行動の背景には、自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder) の特性が関係している場合もあります。


 ASDの特性として、社会的なコミュニケーションにおける暗黙のルール理解が困難なことがあります。たとえば、「返信が遅い=関わりたくないサイン」「一度断られた=今後も断られる可能性が高い」といった脈からの推測が難しい場合、悪意なく何度も連絡をとり続けてしまうことがあります。


この場合、相手を「粘着気質」「悪意がある」と判断するのは誤りであり、対処のアプローチも異なります。


重要: ASDかどうかは専門家による適切なアセスメント(心理検査・診断面接等)なしに判断することはできません。本記事は診断目的ではなく、「さまざまな背景がある」という理解を深めるための情報提供です。

 

1-4. パーソナリティ傾向

 臨床の現場では、しつこさや過剰なかまってほしい行動が、特定のパーソナリティ傾向や障害と関連していることが少なくありません。詳しい特徴などはなかなか専門家でないと判断が難しく、情報を知ることで逆にレッテルを貼り、関係性を複雑にしかねないため詳細は割愛します。


 これら背景を紹介したのは、相手を型にあてはめて「おかしさ」のラベルを貼るためではありません。様々な背景が関連していることを想定することで、あなた自身が相手への過度の怒りや自責から少し距離を置き、より冷静に対処策を考えることができるようになることを目指すためです。

 

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第2章:対処する側の「自己対処能力」の個人差——なぜ同じ状況で消耗度が違うのか

 

 「しつこく連絡してくる相手に対して、なぜ断れないのか」——この問いは、困っているあなたの問題点を問うているわけではありません。臨床の現場でも、「自分がこんなに消耗するのはおかしい」と自分を責める方を多くお見かけします。消耗することは何もおかしくありません。むしろ、自分がなぜ消耗しているのかを知ることが、変化の第一歩です。自分自身の背景にある心理的プロセスを理解することで適切な対処を見いだしやすくなります。

 

2-0 文化的背景

 個人の心理的背景の前に、日本には文化的背景も影響していると考えられます。日本の文化的背景として、「和を乱さない」「相手を傷つけない」という価値観が非常に強く根づいています。心理学では場の調和志向とも呼ばれ、対人関係において直接的な拒否より間接的な回避を選ぶ傾向があります。これは文化的に獲得された特性であり、個人の弱さではありません。が、適切な対人距離をとれない相手とのコミュニケーションの場では問題への対処のしづらさにつながる要因でもありますね。

 

2-1. 対処が「しやすい人」と「困難さを感じる人」の心理的背景

 

臨床心理学の観点から、対処のしやすさを規定する主な要因を以下に整理します。

 

★自己対処がしやすい人の心理的特徴

 

安心型愛着(Secure Attachment)

幼少期に十分な情緒的応答を受けた経験から、「多少のトラブルがあっても関係は続く」「断っても相手は離れない」という基本的な信頼感を持っている人は、相手の反応に過剰に動揺せず、自分のニーズを主張しやすい傾向があります。


高い感情調整能力

感情調整(ER)とは、環境の要求に適切に対応するために、自身の感情的反応をモニター・評価・修正する能力です。相手が怒ったり悲しんだりする可能性を前にしても、自分の感情をある程度コントロールし、冷静に対処できる力といえます。


明確な自己境界の能力

「ここまでは付き合えるが、これ以上は無理」という自己の限界を認識し、それを相手に適切に伝える能力。これは自己尊重(self-respect)と他者尊重のバランスが取れている状態です。

 

★自己対処に困難さを感じる人の心理的特徴

 自己対処が難しくなる心理的背景も存在します。これは本人の「意志が弱い」「甘え」ではなく、心理的な経緯からくるものです。


非安心型愛着傾向

愛着不安や愛着回避として反映される愛着不安定性は、相手が怒ったり不満を示したりするだけで強い不安が喚起されます。その結果、自分のニーズよりも相手の感情を鎮めることを優先してしまいます。


感情調整の困難さ

過剰な承認希求や助言希求などを通じた他者への感情調整の依存など、対人的感情調整スキルの個人差が成人のうつ・不安症状を予測することが示されています。


過度の共感疲労

相手の感情に過度に共鳴してしまい、断ることに強い罪悪感を感じます。


低い自己評価・自責傾向

自己評価が低いと「断ること=悪いこと」という認知が定着しやすく、境界設定が困難になります。


過去のトラウマや被虐待体験

相手の怒りや不満に対して過度に恐怖を感じてしまうため、適切な境界設定が困難になります。また、「自分の感情やニーズを表明することは危険だ」という学習が生じ、境界線を設定しながら自己主張を適切にすることに困難さを感じることがあります。


 自己対処が難しいことは、弱さや欠陥ではありません。それは過去の経験や環境の中で身につけた「適応的な戦略」が、現在の状況には合わなくなっている状態です。適切なサポートを受けることで、多くの場合、対処能力は向上します。

 

2-2. 重要な前提:自己対処が難しい場合は専門家への相談を

 臨床的注意点:自己対処が難しい背景に、過去のトラウマ体験・不安障害・うつ病・発達特性などが関係している場合があります。「断れない自分がおかしい」「なぜ自分だけこんなに苦しいのか」と感じている方は、一人で抱え込まず、公認心理師・臨床心理士・精神科医への相談をお勧めします。


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第3章:「しつこい人・かまってほしい人」のタイプ分類——常識レベルで対処可能か、専門家介入推奨レベルか


 対処法を検討するうえで最も重要なのは、相手の行動が「常識的な範囲」なのか、「専門家介入推奨レベル」なのかを大まかに見極めることです。

 

重要な注意点:以下はあくまでも一般的な傾向の説明であり、診断ではありません。専門的な診断は必ず資格を持つ専門家が行います。本分類は対処法の参考として提示するものです。


3-1. 常識的な範囲の傾向(自己対処が現実的に可能なレベル)


特徴的な行動パターン

  • 連絡の頻度が多く、返信を待てないことがある

  • 話が長くなりがちで、切り上げのタイミングを察しにくい

  • 少し寂しがり屋で、関心を求めてくることがある

  • 指摘すれば理解し、改善の余地がある

  • 基本的な社会的文脈(TPO)は守られている


心理的背景の例

  • 軽度の不安傾向や、生育環境による見捨てられ不安

  • 孤独感や一時的なストレス状態(環境の変化、喪失体験など)

  • コミュニケーションスタイルの違い

  • 自己効力感や社会的スキルの発達途上

 

 このレベルでは、本記事で紹介するセルフヘルプ的な対処法が機能する確率が高いでしょう。「少し寂しがり屋なだけで、相手もまた成長の途上にいる」という視点で関わることが、関係全体を穏やかに保ちやすくします。

 

3-2.専門家介入が望ましいレベル


特徴的な行動パターン

  • 断られた際の怒りや感情の爆発が激しい

  • 自分・他者を傷つける可能性を示唆する言動

  • 数十件・数百件に及ぶメッセージの連投

  • 相手(あなた)の日常生活や仕事・家庭に深刻な影響を及ぼしている

  • ブロックや連絡先変更をしても新たな手段で接触してくる

  • ストーキング行為(尾行・監視・職場や自宅への押しかけ等)

  • 何度、どのように伝えても行動変容がまったく見られない

 

 

重要:相手の言動があなたの安全を脅かすレベルに達している場合(ストーキング・脅迫・暴力等)は、警察や専門機関(配偶者暴力相談支援センター、法テラス等)への相談を最優先にしてください。心理的アドバイスの範疇を超えた問題です。

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第4章:対処する側の自己対処能力×相手のタイプ別 具体的な対処法

ここからは、「相手のタイプ(常識的範囲/専門家介入推奨タイプ)」と「自分の自己対処能力(比較的高い/比較的低い)」の4つの組み合わせごとに、具体的な対処法を提案します。

 

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4-1. ケース①:相手が「常識的範囲の傾向」×自分の「対処能力が比較的高い」

このケースは、最も多くの方が経験するパターンです。適切な対処法を学び、実践することで関係をうまく調整できる可能性が最も高い組み合わせです。

 

【対処法A】時間に区切りをつける「フレーム設定」

 

LINEや電話のやり取りが終わらない場合、最初に時間的な枠組みを設定することが有効です。これは相手をコントロールしようとするのではなく、自分が無理なく関われる「枠」を提示することを意味します。

 

具体的な伝え方の例

 

「今日は◯時まであなたの話を聞けるよ」

「今日は30分しかあいていないんだけど、話したいことある?」

「今ちょっとしか時間ないんだけど、緊急なことある?」

 

なぜこれが有効なのかというと、ERS悪循環のメカニズムを思いだしてください。つまり、「無制限に対応し続けてから急に連絡を断つ」というパターンは、相手の安心希求行動をいったん強化し、最終的に拒絶という最悪の結果をもたらしかねないのです。

時間を区切ることは、相手の情緒的依存を深めさせないための、むしろ相手のためにもなる対応です。

 

【対処法B】返信のタイミングを自分のペースに調整

 

規則的に返信していると、相手はパターンを学習します。行動心理学の観点からは、間歇強化という概念が関係します。不規則に返ってくる反応はむしろ行動を強化する傾向があるため、やみくもにランダムにするのではなく、適切な間隔を保ちながら、返信の頻度を徐々に自分のペースに調整していくことが現実的です。

 

具体的な目安:

 

すぐに返信するのをやめ、半日〜1日後に返す

返信の間隔を少しずつ伸ばしていく(急な変化は逆効果)

返信する際の文量を短くしていく

 

【対処法C】「区切りをつける」会話の終わらせ方


 話の区切りを待っていると永遠に終わりません。脈絡なく終わらせることに罪悪感を感じる方も多いですが、継続的な安心希求行動は身近な他者を苛立たせ、最終的に拒絶という形になることが研究で示されています(Joiner et al., 1992)。真の意味で相手を傷つけないためにも、区切ることは「思いやり」の実践です。

 

具体的な終わらせ方:

 

「あ、ちょっと次の用事があって!またね」と突然でも伝える

「今日はありがとう、疲れたからもう寝るね」

「話聞けてよかった。また今度ね」とポジティブに締める


ポイントは「タイミングを見計らわない」ことです。タイミングを待てば待つほど相手のペースに飲み込まれます。

 

【対処法D】関係の「つかず離れず」を意識的に設計する

 

 相手との関係を「全面的に付き合うか、完全に絶つか」の二択にしないことが重要です。「条件付きの関わり」という中間地点を意識的に作ることで、関係を穏やかに調整できます。完全に無視するのではなく、ゆっくりと関わりの頻度と密度を下げていくことで、相手が緩やかに適応できる可能性が高まります。

 

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4-2. ケース②:相手が「常識的範囲の傾向」×自分の「対処能力が比較的低い」

 このケースでは、対処法を学ぶ前に、まず自分自身を支える基盤を整えることが重要です。「なぜ私はこんなに断れないのだろう」「なぜ疲弊してしまうのだろう」という問いに、丁寧に向き合うことが出発点です。相手はある程度対処可能な状況ですが、自分の中に断ることへの強い罪悪感・不安傾向がある場合、テクニックだけを覚えても実行に移すのが難しかったり、実行した後に強い罪悪感や不安に苛まれ、対処がさらなる問題を生じさせたりすることがあります。

 

【対処法A】自分の感情と欲求を言語化する習慣をつける

 

 なぜ断れないのか、なぜ疲弊するのかを紙に書き出す作業が有効です。「断ったら嫌われるのが怖い」「相手が傷つくと自分が責任を感じる」など、具体的な思考・感情のパターンを認識することが、変化の第一歩です。このような思考・感情のパターンは多くの場合、過去の対人体験と関連しています。「現在の私」が感じているのか、それとも「過去の子どもの頃の私」が感じているのかを分けて考えることが助けになります。

 

【対処法B】「断る練習」を段階的に行う(段階的曝露)


 断ることを含めた自己主張は、生まれ持った性格ではなく、学習可能なスキルです。小さなことから「無理なんだ」を言う練習をすることで、少しずつ自信がわいてきます。

例えば、まず「今日はちょっと時間がなくて…」という表現を使うことから始め、少しずつスキルを身につけていきます。

 

【対処法C】カウンセリングの検討


 自己探索や練習だけでは変化が難しいと感じる場合——特に、断ることへの不安や罪悪感が日常的に強く、様々な対人関係に影響している場合——は、公認心理師・臨床心理士によるカウンセリングが大きな助けになります。

認知行動療法(CBT)のアサーティブネス訓練、あるいは愛着をテーマとした心理療法などが、この種の課題に対して有効であることが研究で示されています。


専門家への相談をお勧めする目安: 断れないことで自分が深刻に消耗している・対人関係全般に支障をきたしている・過去の養育環境との関連が強く感じられる場合は、ひとりで抱え込まず、専門家に相談することをお勧めします。

 

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4-3. ケース③:相手が「専門家介入推奨タイプ」×自分の「対処能力が比較的高い」

 相手が専門家介入推奨タイプの傾向を持っている場合、一般的な対処法だけでは不十分であることが多く、対処法の選択に慎重さが求められます。自己対処能力が比較的高い方であっても、このケースでは消耗・疲弊・二次的被害のリスクを常に意識してください。「自分は大丈夫」と思っていても、気づかないうちにダメージを受けていることがあります。

 

【対処法A】「段階的な距離の拡大」という原則

 1-1でご説明した通り、安心を得ようとする試みは、全体として逆効果になる可能性があります。恐怖を軽減するどころか、不安定さを強化し、葛藤を増やし、関係満足度を低下させることがありました。

 すなわち、専門家介入推奨レベルの傾向を持つ相手に対して「急な拒絶・ブロック・完全な無視」を行うことは、相手の感情的危機を急激に高め、予測不能な反応を引き起こすリスクがあります。特に見捨てられ恐怖が強い傾向では、急激な接触遮断が強烈な怒りや自傷行為、あるいはあなたへの攻撃につながる可能性を排除できません。

 

推奨される段階的アプローチ:

 

1. 返信の頻度を徐々に(週単位で)下げる

急な変化ではなく、ゆっくりと自然な形で接触を減らす

2. 返信内容を短く、感情的な関与を含まない形に変えていく

「うん」「そうなんだね」など、簡単な応答にしていく

3. 必要最低限の接触を保ちながら、新たな共通場面を作らない

二人きりになる状況や新しい話題の展開を避ける

4. 最終的に自然消滅に近い形を目指す

相手が「徐々に疎遠になった」と感じられるように距離を取る

 

【対処法B】相手の言動を「記録」する習慣をつける

 

 特に激しい言動(脅迫的なメッセージ・連続着信・待ち伏せなど)については、日時・内容を記録に残しておくことが重要です。これは今後の法的手段や相談機関への依頼に備えた現実的な準備です。

 スクリーンショット、通話記録、手書きのメモなど、形式を問いません。「大げさかな」と感じる段階でも記録を開始することをお勧めします。記録をつけること自体が、あなたが状況を客観的に見る助けにもなります。

 

 

【対処法C】自分の「支援者ネットワーク」を整備する

 

 一人で対処しようとしないことが重要です。信頼できる友人・家族に状況を共有し、万が一の際に対応できる人を確保しておきましょう。職場での問題であれば、上司や人事部門への相談も選択肢のひとつです。「巻き込みたくない」という気持ちはよく分かりますが、誰かに知っておいてもらうだけで、あなた自身の安心感は大きく変わります。


【対処法D】専門機関への相談を検討するタイミング

 

以下のいずれかに該当する場合は、専門機関への相談を推奨します

  • 相手があなたの自宅・職場に押しかける、または付近をうろつく(ストーキング的行動)

  • 「消えてやる」「死んでやる」など自傷・自殺をほのめかす発言がある

  • SNSや第三者を通じた嫌がらせがある

  • あなた自身が強い恐怖・不安・睡眠障害などを感じている


相談先の例:

  • 警察の生活安全課(ストーキング相談)

  • 配偶者暴力相談支援センター(DV・ハラスメントに関する問題)

  • 法テラス(法律的対応が必要な場合)

  • 警察相談専用電話  #9110(24時間対応)

  • DV相談+(電話・チャット)

  • 公認心理師・臨床心理士によるカウンセリング(自分自身のケア)

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4-4. ケース④:相手が「専門家介入推奨レベル」×自分の「対処能力が比較的低い」

 このケースは4つの組み合わせの中で最もリスクが高く、最もケアが必要な状況です。相手への対処法を考える前に、まず自分自身の安全と心身の健康を守ることを最優先にしてください。「相手をどうにかしなければ」ではなく、「今の自分をどう守るか」が最初の対処

です。

 

【最優先事項】自分自身を守る

 

自分を追い詰めずに、以下の「自己保護の原則」を最優先にしてください。

 

自己保護の原則

 

  • 「相手を助けなければ」という義務感を手放す

  • 相手のすべての要求に応えることは不可能であり、あなたにはそれを断る権利がある

  • 自分の限界を超えた関与は、自分を傷つけるだけでなく、最終的には相手をも助けない

 

【対処法A】まず専門家への相談を「自分のために」行う


 このケースでは、対処法を自分で考えることそのものが負担となります。公認心理師・臨床心理士への相談を、相手のためではなく自分のために行うことを強くお勧めします。

 

専門家との面談では、次のようなことに取り組めます:

 

  • 自分自身の感情・消耗状態の整理(システム視点・アセスメント)

  • 境界設定スキルの習得(弁証法的行動療法)

  • なぜ断れないのかの背景理解(スキーマ療法・メンタライジング・アプローチ)

  • 安全な離脱の計画立案

  • トラウマケア

 

【対処法B】「応じない」を「罪悪感なく実行する」ための認知的準備

 

 このケースで最も多く見られる困難は、「断ったら相手が傷つく」「自分が悪いことをしているようで申し訳ない」という罪悪感です。しかし、継続的な安心希求への無制限の応答は、最終的に相手を拒絶することにつながると研究が示していました(Joiner et al., 1992)。関わり続けることが相手のためになるわけではないことを、認知的に整理する必要があります。

 

以下の考え方が助けになることがあります:

 

「私が無制限に対応し続けることが、相手の成長を妨げている可能性がある」

「相手が苦しんでいるのは、私の責任ではない。私にできることには限界がある」

「私が消耗して倒れることは、相手にとっても良い結果をもたらさない」

 

【対処法C】相手との接触を制限するための物理的・デジタル的な手段

 

 自己対処能力が低い場合、精神的な距離を取ることは非常に難しいため、物理的・デジタル的な手段で接触を制限する仕組みを作ることが現実的です。

 

具体的な手段:

 

  • LINEの通知をオフにする(ブロックではなく、まず通知の抑制から)

  • 特定の時間帯(例:就寝前・食事中)はスマートフォンを確認しないルールを決める

  • 応答する時間帯を事前に決め、その時間以外は返信しないことを相手に伝える

  • 必要に応じてアカウントのミュート・ブロック機能を使用する


ブロックを行う際の注意点:専門家介入推奨傾向を持つ相手への突然のブロックは、感情的危機を引き起こすリスクがあります。可能であれば警察や支援機関に相談したうえで判断してください。

 

【対処法D】「セルフケア」を怠らない

 

このケースでは、対処法以前に、あなた自身のケアが最も重要な「対処法」です。

 

以下のセルフケアを意識的に取り入れることを推奨します:

 

  • 十分な睡眠と規則正しい生活リズムの確保

  • 信頼できる人との交流・相談時間の確保

  • 趣味や好きな活動を通じた「回復時間」の設定

  • 必要であれば専門家によるカウンセリングの定期的な受診

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第5章:特に配慮が必要な相手への対処


5-1. 「3回断っても引かない」相手への対応原則

 一般的なコミュニケーションの場では、断りのサインを2〜3回受け取れば多くの人は引きます。しかし、3回以上明確に断っても行動を変えない相手については、「空気を読まない」だけでなく、対人関係の認識そのものに差異がある可能性を考慮する必要があります。

 

このような相手への基本原則:

 

1. 明確な言語表現で断る

曖昧な断り方(「今日はちょっと…」)は通じないことが多い。「今後もお付き合いはできません」と明確に伝えることが必要な場面もある

2. 断った事実を記録に残す

後に問題が発展した場合の証拠として

3. 関係の完全終了を告げる前に第三者に相談する

突然の拒絶が相手の感情的危機を引き起こすリスクを評価してもらう

4. 自分の安全を最優先に考える

相手の感情より自分の安全を優先することは正当です

 

5-2. 「消えてしまいたい」「自分を傷つける」と言葉にする相手への対処

【重要な臨床的注意点】 これは特別な配慮が必要な問題です。

 相手が「消えてしまいたい」「死にたい」「自分を傷つける」と言葉にした場合、「脅し」や「かまってほしいだけ」と軽視することは非常に危険です。

 たとえ「操作的な意図」があるように感じられる場面でも、自傷・自殺に関わる発言は必ず真剣に受け止めてください。

 

このような場合の対応原則

 

「自殺や自傷を考えているなら、専門家に相談することをおすすめするよ。たとえば、まもろうよこころというサイトをみるといろんな相談先の情報があるよ。たとえば、よりそいホットライン(0120-279-338)に電話するのはどうかな」と伝える。

 

「見放してしまうことになるのでは?」「おおげさなのでは?」「やっぱり自分がなんとかしなきゃ」と思うかも知れませんが、あなたが「専門家の代わり」を引き受けることはできませんし、すべきでもありません。このケースで大切なのは、あなたが「自殺や自傷を訴えている相手」を専門家につなぐ役割を全うすることです。


 操作的だと軽視したり、自分がなんとかしなければの背景には、あなた自身の不安が背景にあります。この不安にうまく対処するのは大変難しいことです。これまでの臨床経験で、日常的の対人関係の中で「自殺や自傷」に適切に対処できる人はほとんどいないといっても過言ではありません。


 相手の自傷・自殺リスクを一人で抱え込まず、必要であれば救急・警察・相談機関に連絡することをためらわないでください。また、あなた自身も相手への対応で強いストレスを感じているなら、専門家への相談であなたのストレスを軽減することも必要です


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第6章:「かまってほしい人」との関係を長期的に維持するために


6-1. 「適切な関わり」は相手への贈り物にもなりうる

 カウンセリングの実践から痛感することがあります。「しつこい人・かまってほしい人」は、しばしば「自分のペースで応答がないということは、相手は自分を嫌っている」というような極端な二者択一の認識を持っています。関わる側が時間・エネルギー・関与の度合いに「枠」を作ることは、相手が初めて「条件付きではあっても、自分と付き合ってくれる人がいる」という経験をする機会になることがあります。

 

 愛着のタイプは、固定ではなく、対人関係の中で変化します。不安定型愛着パターンを持つ人が「安定した、予測可能な範囲での関わり」を経験することは、新たな関係経験の形成につながる可能性があります。これは専門的な治療の代替ではありませんが、日常的な人間関係において意味を持ちます。

 

6-2. 「適切な関わり」の実践3原則

原則①:一貫性を保つ

 

「今日は1時間付き合えるが、明日は5分しかない」という大きな変動は、相手の不安を高めます。可能な範囲で、自分が関われる量・頻度を一定に保つことが相手の情緒的安定に寄与します。

 

原則②:ポジティブな関わりの質を高める

 

関わる時間が短くても、その時間の質を高めることで、関係の満足感を双方が感じやすくなります。「なんとなく長時間いる」より「30分でも集中して聞く」方が、相手の安心感を満たしやすいことがあります。

 

原則③:「境界の設定」を否定的なメッセージとして伝えない

 

「忙しいから無理」「あなたとは限界」ではなく、「今日は◯時まで話せるよ」「週に一回なら話を聞けるよ」という肯定的な枠組みでの表現が、相手の見捨てられ感を最小化します。

 

6-3. 「変われる人」と「変われない人」がいることを理解する

 臨床的に正直に申し上げると、適切な関わりを続けても変化が見られない方もいます。特に、専門家介入推奨のパーソナリティ傾向が固定化している場合、日常的な人間関係の範囲内での変化は限定的です。

 

こうした現実を踏まえたうえで、「相手を変える(わかってもらう)こと」より「この関係の中で自分が消耗しないこと」を目標にシフトすることが、長期的な関係維持においても重要です。

 

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第7章:自分自身を守るための長期的なセルフケア

7-1. 「消耗した関係」からの回復プロセス

 しつこい人・かまってほしい人との関係で長期間消耗した場合、その影響は関係終了後も続くことがあります。

以下のような症状が続く場合は、専門家への相談を検討してください:

 

  • 対人関係全般への恐怖・回避

  • 誰かから連絡が来るだけで強い緊張・不安を感じる

  • 睡眠障害・食欲不振・集中困難

  • 「自分が悪かったのではないか」という強い自責感

  • 特定の人物への強烈な怒り・恐怖が持続する


これらは、二次的トラウマ反応として理解される場合があり、適切な心理的支援によって改善が期待できます。

 

7-2. 感情調整スキルの育成——長期的な対人関係の質を高めるために

 幼少期から若年成人期にかけて、私たちは養育者や対人関係から学びながら、継続的に感情調整スキルを多様化させていきます。成人になると、最もよく使う感情調整スキルのより安定したパターンを示し始め、感情経験への反応方法の個人差は、さまざまな対人的・心理的・身体的ウェルビーイング指標と関連しています。

 

 感情調整スキルは、適切なトレーニングや心理療法によって後天的に向上させることができます。認知行動療法(CBT)、弁証法的行動療法(DBT)、マインドフルネスに基づく介入などが、この領域で有効性を示しています。

 

7-3. 健全な対人関係を育むための基本的な考え方

 最終的に、「しつこい人・かまってほしい人」との関係で最も大切なことは、自分自身の心身の健康を守ることです。

以下の考え方を日頃から意識することをおすすめします:

 

  • 「ノー」と言うことは、相手を傷つけることではない:適切な断りは、健全な関係の基本です

  • 自分のエネルギーは有限であることを認識する:無限に他者に注ぐことは誰にもできません

  • 相手の感情の責任は相手自身にある:相手が怒る・悲しむことは、あなたのせいではありません

  • 関係の質は、関係の量(時間や頻度)で決まるわけではない

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第8章:まとめ——「しつこい人・かまってほしい人」への対処は、自分と相手両方への思いやり

 本記事を通じて、しつこい人・かまってほしい人への対処は、単なるテクニックの問題ではなく、相手の心理的背景への理解と自分自身の心理的リソースの評価の両方が必要であることをお伝えしてきました。

 

本記事の要点の整理:

 

  1. 「しつこさ」の背景には、不安型愛着・過剰承認希求・パーソナリティ傾向など、複数の心理的メカニズムが存在する

  2. 対処する側の自己対処能力(愛着スタイル・感情調整能力・自己効力感など)によって、適切な対処法は異なる

  3. 相手が「常識的範囲の傾向」か「病的レベルの傾向」かによって、対処法のリスクと複雑さは大きく変わる

  4. どの組み合わせであっても、「急激な拒絶」より「段階的な距離の調整」が基本原則

  5. 相手が病的レベルの傾向を持ち、かつ自分の自己対処能力が低い場合は、セルフヘルプの前に専門家への相談を最優先に

  6. 適切な関わりの「枠」を設けることは、相手にとっても新しい対人関係の経験になりうる

  7. 自分自身のウェルビーイングを守ることが、長期的なすべての対処法の基盤

 

 最後に、専門家としての言葉を添えます。 カウンセリングの現場では、「しつこい人への対処に疲れ果てた」という方が、実は自分自身の対人パターンや傷つきについて気づきを得ることで、その後の人間関係全般が豊かになるという経験をされることがよくあります。今抱えている困難が、自己理解を深めるきっかけになることを願っています。


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参考文献

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担当する心理士

塚越友子PhD

(つかこしともこ)

博士(教育学)・臨床心理士・公認心理師

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自殺念慮(希死念慮)を含む危機状態、家族関係、対人関係における関係性の問題を専門とし、長年改善しない悩みや生きづらさに対して、関係性の再構築を通じて日常を動かし人生を再構築するための変化を18年以上にわたり支援しています。

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