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依存的な人とうまく距離をとるには? −−無理をしない関わり方の秘訣

  • 2024年2月28日
  • 読了時間: 25分

更新日:5月19日

監修:塚越友子PhD. 公認心理師・臨床心理士・博士(教育学)・/東北大学大学院教育学研究科 臨床心理学コース修了

最終更新日:2026年5月


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【免責事項】

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。具体的な対人関係の悩みや、ご自身のメンタルヘルスについての懸念がある場合は、公認心理師・臨床心理士・精神科医など専門家への相談をお勧めします。

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はじめに――「なぜあの人から連絡がくると思うだけで気持ちが重くなるのか」


ちょっとした親切心で気にかけた相手から、立て続けにLINEが届く。SNSで少し親しく話しかけたら、毎日のように長文メッセージが来るようになった。友人からの連絡が昼夜を問わず続き、返信するたびにエネルギーが吸い取られる感覚がある――。


そんな経験を持つ方は少なくありません。


「ちゃんと断りたいけれど、傷つけてしまいそうで怖い」 「もう限界なのに、急に切り捨てるのも気が引ける」 「やんわり距離を置いたら、今度は罪悪感でいっぱいになった」


こうした悩みを抱える方の多くは、良識的で、責任感の強い人です。だからこそ、相手のニーズに応え続け、いつの間にか自分自身を消耗しておられます。本記事では、そうした状況の心理的な背景を学術的な知見に基づいて解説し、自分自身も大切にしながら、相手とも誠実に関われる現実的な距離感のとり方をご紹介します。


また、本記事は「困っている方」だけでなく、「自分は人に頼りすぎているかもしれない」と気になっている方にも、同等に役立てていただける側面の情報も提供しております。よろしければご一読ください。


▼▼目次


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1. 「対人依存」とは何か――臨床心理学からの視点


1-1. 依存の連続体:病理ではなく"程度の問題"として捉える

まず大切なのは、「人に依存すること」は、それ自体が悪いことでも、特別な問題でもないという認識です。人間はもともと、他者とのつながりによって安心感を得る社会的動物です。Bowlby(1980)が提唱した愛着理論(Attachment Theory)では、人は生涯を通じて他者への近接欲求を持ち、安心の基地(Secure Base)を必要とすることが強調されています。


問題となるのは、依存の「程度」と「パターン」が硬直化し、対人関係に支障をきたす場合です。


たとえば、依存性パーソナリティ障害(Dependent Personality Disorder: DPD)は、他者に世話をしてもらいたいという過剰な欲求があり、服従的・依存的で、親密な関係を失うことへの恐怖を特徴とする広範なパターンとして定義され(DSM5)、診断基準を満たすような依存も存在します。


ただし重要なのは、こうした特徴は「診断基準を満たすほど不適応的な依存」から「日常的な依存傾向」まで連続した程度の問題として存在するという点です。本記事が扱うのは後者、つまり専門的な診断の対象というより、日々の対人関係の中で誰もが経験しうる「依存的なやりとりのパターン」です。


1-2. 依存的な関係パターンの心理的背景

ボウルビィは、依存性は人間の生存のためにあらかじめ用意された性質であることを発見し、愛着(アタッチメント)として定義しました。依存行動は、養育者との最初の交流の文脈で学習された行動で、子どもたちは徐々に、養育者からケアを引き出す上でどの行動が効果的かを学び、ケア希求行動を最大限の報酬が得られるよう調整していきます。


「助けを求めると、人が来てくれる」という経験の積み重ねの中で、養育者の助けが過剰であったり、不安定な助けだった場合に、依存的な行動パターンを形成するのです。これは意識的な操作というよりも、幼少期からの学習の産物です。子どもが親の助けやケアなしには生きていけないため、生存戦略として備わっているものです。しかし、私たちはオトナになり自律できると、幼少期のころのようにケアを希求する必要がなくなります。そのため、成長しても幼少期のように助けを求める人を未熟な傾向にある人、あるいは「依存的な人」ととらえるのです。


大人になると、助けの意味するところは様々で、愛される価値がないと思っている人は、他者からの過剰な承認を求める傾向にありますし、孤独や見捨てられることへの恐怖を持つ人も他者にしがみつく行動がみられます。また、情動依存のような特定の感情を得ることにのめり込み日常の対人関係に支障がでてもその感情を求めてしまうなど様々な形で依存行動をとります(Ghasemzadeh,2023; Lemos,2019)。


1-3. 「見捨てられ不安」という核心

依存的な関わり方のパターンの多くに共通するのは、「見捨てられることへの強い恐怖」です。

私が日々のカウンセリング実践の中でよく出会うのは、「相手に受け入れてほしい」「この関係を失いたくない」という切実な感情を持ちながらも、その表出の仕方(迎合的・しがみつき・罪悪感を抱かせる)が相手を追い詰めてしまい、結果として関係が悪化するというパターンです。依存的な行動は、孤独を避けたいという心の動きから生まれているのだ、と理解することを出発点にすると相手に対する気持ちも少し和らぐかもしれません。


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2. なぜ「親切にすること」が問題をこじらせるのか


2-1. 応答することが「依存パターン」を強化する――強化学習の視点

「困っている人を無視できない」という方の多くが直面するのは、応じれば応じるほど、求めがエスカレートしていくという現象です。1-2でも説明したように依存は関係性の学習のパターンと捉えることができました。「強化」のメカニズムです。


オペラント条件付け(Skinner, 1938)の原理によれば、ある行動の後に望ましい結果が続くと、その行動は繰り返されやすくなります。「助けを求める→相手が応じてくれる」というサイクルが繰り返されると、助けを求める行動はより強化されます。


さらに厄介なのは「間欠強化」のメカニズムです。毎回ではなく、「時々」応じることの方が、行動はより粘り強くなります。


間欠強化の理論に基づくデザインは、予測不可能な報酬の提示(たとえばランダムに現れる「いいね」や人気コンテンツの配信)によって継続的にドーパミン放出を刺激し、報酬予測誤差を悪化させ、社会的交流を機能的行動から依存的行動へと徐々に変容させます。(Wang&Wang, 2025)


これはSNS依存の文脈での知見ですが、対人関係においても同様の原理が働きます。「時々しか返信しない」という行動は、実は依存的な求めを最も強化しやすいのです。

詳しくは、「連絡がしつこい人・かまってほしいタイプの人とうまく距離をとるには?」にも記載しましたので、こちらも参照ください。


2-2. 「助けること」が相手の自立を奪うこともある

もうひとつ重要な視点は、無条件に応じ続けることが、相手の自律的な問題解決能力の発達を妨げる可能性があるという点です。


過保護な育て方と生物学的素因の組み合わせが依存性パーソナリティ特性を引き出す可能性があり、こうした過保護な子育てスタイルは、主張・問題解決・意思決定などの自律的なコーピング行動の発達を妨げます。


臨床の現場でも、家族や友人が「助けてあげたい」という善意から何でも引き受けてしまい、当事者が自分で課題に向き合う機会を失ってしまうケースを目にします。


これは相手が悪いわけでも、助けた人が悪いわけでもありません。しかし「適切なサポート」と「過剰なサポート」の境界線を意識することは、双方にとって重要です。


2-3.共感疲労(Compassion Fatigue)のリスク

依存的な関わりに長期間さらされると、「共感疲労(Compassion Fatigue)」に陥るリスクがあります。


共感疲労とは、トラウマや疾病、苦悩を経験している人々のケアに携わる人が経験する可能性のある、疲弊と共感能力の低下として現れる心理的・精神的な外傷性ストレスへの反応です。(Boscarino, Figley & Adams., 2004)


ヘルス・ケアにおいて共感疲労は特に起こりやすく、それは本来思いやりのある共感能力の高い人々が他者のケア役割を担いやすく、ケアには共感をすることで得られる満足感と共感疲労という負の側面の両面があるからです。他者のケアをし続けることは、共感疲労とバーンアウトをもたらします。(Noor et al., 2025 Timofeiov-Tudose & Măirean., 2023))


これは医療・福祉の専門職に限った話ではありません。日常的な対人関係においても、感受性の高い人が依存的な関係に巻き込まれ続けると、エネルギーの枯渇、感情的な麻痺、倦怠感が生じます。自分が疲弊してしまうことは、援助をどこかで打ち切るタイミングが訪れることにつながりますので、相手にとっても長い目で見れば良いことではありません。


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3. 依存的な関わりに気づくサイン――関係を振り返るチェックポイント


3-1. 関わる側のサイン

次のような状態が続いているなら、関係のバランスを見直すタイミングかもしれません。


特定の人からの連絡があると、緊張感や憂鬱感が生じる

返信しなければならない義務感で、自分の時間や睡眠が削られている

相手の感情を「なんとかしてあげなければ」という責任感が強い

断ったり意見を言ったりすることへの強い罪悪感がある

助けた後、達成感よりも疲弊感の方が大きい


共感疲労は欲求不満や怒りとして単純化されることがありますが、それは一夜にして起こるものではありません。それは何日・何週・何ヶ月・何年にも及ぶお世話しなければという思いの累積的な結果であり、終わりがなく、感情的に要求が高く、身体的に消耗するものです。その結果、欲求不満、恨み、無力感、罪悪感、および自己感覚の低下が現れることが珍しくありません。


3-2. 依存的な関わりのパターンに気づく(自分自身が依存的になっていないか確認する)

以下は、対人関係における依存的なパターンの例です。「関わられている方」だけでなく、「自分自身の行動を振り返りたい方」も確認してみてください。


誰かに連絡せずにいられない不安が強い

相手が即座に返信しないと、見捨てられたと感じる

一人で問題を解決することへの強い恐怖がある

自分の感情や行動の責任を他者に求めがちである

特定の相手への依存が強まると、その人のことを理想化したり、逆に激しく非難したりする

過去の対人関係に関連するネガティブな感情が蘇り圧倒されている感じがある


こうした傾向がご自身に見られると感じる場合、それは弱さではなく、過去の経験から形成されたパターンです。専門家に相談することで、より自分らしい関係の築き方を見つけることができます。


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4. 依存的な人との距離の取り方――実践的なHOW TO

7 Step

この7stepは、「関わりを断ち切る」ためではなく、自分も相手も尊重しながら、関係のバランスを取り戻すための実践的な方法です。関係の文脈(家族・友人・職場など)によって適切な方法は異なりますので、状況に合わせてご活用ください。大切なことは、きれいさっぱり、相手も納得して関係が整理されることをあまり期待しないことです。


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STEP 1:自分の状態を先に把握する――「感情の棚卸し」から始める

距離を取ろうとする前に、まず自分が今どういう状態にあるかを知ることからはじめます。


怒り、疲弊、罪悪感、同情、使命感――これらの感情が混在していることがほとんどです。感情の状態を認識せずに行動に移すと、衝動的に「もう無理!」と突然関係を絶ってしまったり、逆に限界を超えても我慢し続けてしまったりします。


実践の手順:


1. 関わった後の自分の感情を、5分程度ノートに書き出してみましょう

2. 「疲弊感:10点中何点か」「罪悪感:10点中何点か」と数値化するとより明確になります

3. 「自分はどの程度の関わりなら、疲弊せずに続けられるか」を考えます


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STEP 2:「境界」を知る――心理的バウンダリーとは何か

「境界を引く(バウンダリーを設ける)」という言葉はよく聞くかもしれません。心理学的には、境界とは相手をコントロールするものではなく、自分の行動の指針を明確にするものです。つまり、他者に他者自身の行動を変えさせることを期待するのではなく、対人状況に対する自分自身の反応を変えることで境界を設定します。


たとえば、「夜10時以降は返信しない」という境界は、相手に「夜は連絡するな」と命令することではなく、「自分は夜10時以降は返信しない」という自分自身のルールを決めることです。これは相手を拒絶するというより、自分の心身を守るための自己管理です。

相談現場ではよく聴くことなのですが、境界を引くという方法をSNSなどで読んで「夜は連絡しないで」などと相手に自分のルールを伝えてしまい、トラブルになる方が多いので、注意してください。相手に伝えるのではなく、自分が自分のルールを守ることで境界を引くのです。


(補足)境界線の概念には誤解も多いので基礎のおさらい

境界線とは、自分自身で定めた制限であり、行動やコミュニケーションを通じて示すものです。境界線を引くことで、職場や家庭での人間関係において、安心感と健全な関係を築くことができます。

境界線とは、例えば次のようなことを尊重することと言えます:

身体的な境界線(例えば、初めて会った人に抱きしめられるのが気まずいと感じるなど)

言葉による境界線(例えば、同僚に上から目線で話されるのを嫌がるなど)

職場における境界線(例えば、勤務時間外にメールをチェックしないなど)


境界線は、以下のカテゴリーでそれぞれ機能します。

感情面:心の健康を守る

身体面:身の回りの環境を守る

性面:性的なニーズと安全を守る

職場:ワークライフバランスを守る

物質面:私物を守る

時間:時間の有効活用と無駄遣いを防ぐ


いわば自分が他者からどのように扱われたいかという自分ルールで、お互いに境界線を尊重することで、心身の健康を保ち、健全な人間関係を築くことができます。

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STEP 3:応答の「量」と「速度」を意識的に調整する

突然返信を止めたり、着信拒否をしたりするような急激な変化は、相手にとっても衝撃が大きく、かえって不安や混乱を招くことがあります。


推奨アプローチ:段階的な調整


1. まず返信の「スピード」を少し遅らせる(即返信からやめる)

2. 次に「文量」を短くする(長文への返信を短文にする)

3. 「頻度」を少しずつ下げる(1日5回の返信を2〜3回に)


この段階的なアプローチは、行動療法的な「漸次的消去」の考え方に近いものです。急に応答を止めるのではなく、緩やかに応答量を減らすことで、相手への急激な衝撃を和らげながら、関係パターンの変化を促すことを目的としています。相手が変わるか?は相手次第なので、難しいケースもあります。


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STEP 4:「共感」と「解決策の提供」を切り分ける

依存的なやりとりで消耗するパターンのひとつは、相手の感情的な訴えに対して、毎回「解決策」を提供しようとすることです。


臨床の現場では、「アドバイス」が功を奏するタイミングを慎重に検討します。クライエントが心の奥底で認めているのは何か?を読み取ることが重要なのです。日常的な関係で感覚的に理解していると思いますが、「何度アドバイスしても変わらない」という状況はよく起こると思います。それは必ずしもアドバイスが悪いからではなく、相手が求めているものが「解決」ではなく「つながりの確認」である場合が多いからです。


実践の手順:


「それは大変だったね」と短く共感を示す(感情を受け取る)

「確かに難しい問題だね。あなたはどうしたいんだろうね。」と主体性を相手に返し、

具体的なアドバイスや解決策の提供は控えめにします。


これにより、「話を聞いてもらえた」という感覚は与えながら、依存のサイクルを過度に強化しないようにできます。もちろん、「どうしたらいいのか」としがみついてくることがほとんどですが、ここでもバウンダリーの設定を自分の中でひき、感情に寄り添うだけで答えは渡さないようにじっと相手の圧に耐えます。


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STEP 5:「Iメッセージ」で自分のニーズを伝える

断る・距離を置く際に、相手を責めずに自分の状態を伝えることができる「Iメッセージ(I-message)」は、対人コミュニケーションの研究で古くから支持されています(Gordon, 1970)。


Youメッセージ(避けたい表現): 「あなたが毎日連絡してくるから困ってるんだけど」


Iメッセージ(推奨される表現): 「(私は)最近、仕事が繁忙期で、すぐに返信できないことが多くなりそう。ごめんね」


「あなたが問題だ」という構造ではなく、「私の状態としてこうなっている」という構造で伝えることで、相手が防御的になりにくくなります。もちろんなりにくくなるというだけで、過剰に反応する方もいるかもしれません。その場合には、もしかしたら、ひとりで対処するには難しい方なのかもしれません。


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STEP 6:「継続して関わるにはどうしたらいいか」を考える

ここでは、多くの一般的なアドバイスには含まれない1つのアプローチを紹介します。


多くの場合、「関わるか・関わらないか」という二択で考えがちですが、「〇〇な状況のときだけ関わる」という条件を設定するのです。


たとえば、


「LINEへの返信は、週末の午後だけにする」

「会う約束は、月に1回まで」

「相談は、具体的な行動について話してくれるときだけ応じる(ただ愚痴を聞くだけには応じない)」

これは「相手を突き放す」ためではなく、関わる「場と頻度」を自分でデザインするということです。


Step2・3と似ているように見えますが、「断る・距離を置く」という方向でのみ考えず、「どういう関わりなら自分も楽しめるか、持続できるか」を積極的に設計するという発想の転換です。ポジティブな発想で、“距離を取る”ことになりますので、相手との付き合いはしんどいけど、断ったり距離を置くのは、どうしても気が引ける、罪悪感が強い方にとってはやりやすい方法です。


この方法は、対人関係療法(Interpersonal Therapy)における「役割交渉(Role Negotiation)」の概念とも通じています。関係の質や範囲について、明示的・暗示的に調整することで、双方が満足できる関係を構築していきます。


境界を設けることは自己中心的なことではなく、健全なつながりを維持するための必要な側面です。自分の限界や期待を暗に伝えるもしくは、話し合えるなら話し合い、双方が圧倒されることなく共に存在できる環境が生まれます。


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STEP 7:自分のサポートネットワークを充実させる

依存的な関わりに巻き込まれやすい方の多くは、自分が誰かに頼ることへの抵抗感が強い傾向があります。「頼るのは迷惑をかけること」という信念が根底にあると、他者の頼りをむしろ受け入れやすく(断りにくく)なる可能性があります。


自分自身のサポートネットワーク(信頼できる友人、趣味のコミュニティ、専門家など)を意識的に充実させることは、依存的な関係の「受け皿」になりすぎないための予防策にもなります。


感情的な依存を克服し自立を促進するためには、強力なサポートネットワークを構築することが重要です。成長を励まし境界を尊重してくれる人々に囲まれることで、感情的なレジリエンスの確固とした基盤が提供されます。


★参考:伝え方を考える「非暴力コミュニケーション

(NVC: Nonviolent Communication)の活用」


マーシャル・ローゼンバーグが開発した非暴力コミュニケーション(NVC: Nonviolent Communication)は、感情的に難しい会話を、相互理解を壊さずに行うための実践的なフレームワークです。

STEP 5でどのように伝えれば関係を壊さずに伝えられるか考える際のフレームワークとして活用することができるかもしれません。

NVCには「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」という4ステップがあります(Rosenberg,2015)。


ステップ1:観察(Observation) 評価や判断を交えずに、起きていることを具体的に書き出す。 例:「最近、1日に10回以上メッセージが届いている」


ステップ2:感情(Feeling) 自分が感じていることを書き出す。 例:「私は、自分の時間が持てなくて、追い詰められているような感覚がある」


ステップ3:ニーズ(Need) その感情の背景にある自分の欲求を書き出す。 例:「私には、仕事の後にひとりゆっくり回復する時間が必要」


ステップ4:リクエスト(Request) 明らかになったニーズを相手に具体的で実行可能なお願いとして伝える。 例:「私には仕事の後にひとりゆっくりする時間が必要です。夜9時以降のメッセージへの返信は翌朝にしてもいいですか?」


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5. 職場・家族・友人別――関係性による対応の調整


5-1. 職場での依存的な関わりへの対応

職場では完全に関係を絶つことは現実的ではなく、また上下関係や業務上の義務も存在しますので、難しい局面です。


推奨アプローチ:


業務の範囲を明確にすることが最初の一歩です。「それは私の業務範囲外になるので、今はお手伝いすることは難しいです」「私にもお手伝いするのは難しい問題なので、上司に相談した方が良いと思います」という言葉は、一見相手を突き放すように聞こえますが、「適切な窓口に誘導する」という意味を持ちます。


感情的な相談が業務時間中に繰り返される場合は、「今は少し立て込んでいるので、昼休みに少し聞きますね」などと時間を区切ることが有効です。全面的に拒否するのではなく、応答する「枠」を自分で設定することで、消耗を防ぎながら関係を維持できます。


また、職場での過度な依存的関わりは、メンタルヘルスや業務効率に影響することがあります。社内外の相談窓口(社内相談室・EAP)や人事部門を活用することも、選択肢の一つとして覚えておいてください。


5-2. 家族関係での依存的な関わりへの対応

家族関係は、最もバウンダリーを設けにくい関係の一つです。「家族なのだから助けるべき」「家族の問題は恥、外部には知らせてはいけない」という価値観が根強くある日本のような文化的文脈では特にそうです。


家族関係においては「完全な分離」より「適切な距離感」が現実的です。家族の中での役割(世話をする立場・される立場)が固定化していると感じる場合、家族療法(Family Therapy)の視点が参考になります。家族システム全体のパターンを変えることが目標であり、一人でお世話を抱え込まないことが大切です。なかなか自分ひとりでは対処を考えることが難しいので、専門家を頼ることをおすすめします。


さらに家族の問題が深刻な場合(暴力・強い支配・依存症の関係など)も、個人での対処に限界があります。専門家への相談や、家族相談センターなどの公的機関の利用も検討してください。


5-3. 友人関係での依存的な関わりへの対応

友人関係は、職場や家族と異なり、関与の度合いを比較的自由に調整しやすい関係です。


プライベートの関係においては、「好意」でつながっているからこそ、「申し訳ない」という感覚が生まれやすいですが、プライベートだからこそ無理のない関係を続けることは長期的に見て双方にとって健全です。


「最近少し自分の時間が必要で」「今は余裕がなくて」という言葉は、嘘でも言い訳でもなく、正直な自己開示です。友人関係においては、自分の状態を正直に共有することが、関係の誠実さを保つことにもなります。


また、相手に対して「専門家への相談」を勧めることも、友人としてとれる重要なアクションです。「あなたのことが心配だから、専門家に話してみることを考えてみて」という一言が、本人の治療へのアクセスを促すきっかけになることがあります。


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6. 自分が「助けたい衝動」を持ちやすい場合――共依存の視点


6-1. 「助けることで自分が安定する」という構造

依存的な関わりの問題は、「依存する側」だけの問題ではありません。「助ける側」にも、助けることによって自分の価値を確認したり、人間関係における居場所を感じたりするというパターンが存在することがあります。


よく耳にすると思いますが「共依存(Codependency)」と呼ばれる概念で、お互いが相手のパターンを必要としている状態を指します。


あなたが自分の領海(感情の境界)を持たなくなり、相手も自分の領海を持たなくなると、相手の感情に責任を取り、相手があなたの感情に責任を取るようになります。どこで自分が終わり、相手が始まるかわからなくなります。これが共依存・過剰なケアテイキング・感情的に虐待的な関係においてトラブルの源となります。


「困っている人を見ると放っておけない」という傾向が非常に強い方は、ご自身の幼少期の経験や、関係性のパターンについて専門家と振り返ってみることが助けになることがあります。


6-2. 「助けることへの衝動」の根にあるもの

臨床的な経験の中では、幼少期に親の感情の世話をしてきた(親役割を担ってきた)経験を持つ方が、大人になってからも「誰かを助けずにはいられない」というパターンを持つケースがあります。


「自分が助けることで関係が保たれる」「役に立たない自分には価値がない」という信念が根底にあると、相手が依存的な行動を示した際に、自動的に「助ける」という行動が引き出されやすくなります。


こうした信念は、認知行動療法(CBT)やスキーマ療法などのアプローチで探求・変容させることができます。自分の関わり方のパターンが気になる場合は、カウンセリングを活用されることをお勧めします。


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7. 自らの依存的な関わりに苦しんでいる方へ

本記事をここまで読んで、「もしかして私が依存的なのかも」と感じた方へ。


まず、こうして自分のパターンを振り返ろうとしていること自体が、とても重要な第一歩です。依存的な関わり方は、意図的な「わがまま」や「甘え」ではなく、多くの場合、生育環境や経験の中で形成されたものです。


つまり、変化は可能であるということです。


「一人でいることへの恐怖」「見捨てられることへの不安」は、適切な支援と時間の中で、少しずつ和らいでいきます。


愛着スタイルは可塑的であり、硬直したものではなく、関係の中で影響を受け、形を変えることができます。


カウンセリングや心理療法は、自分のパターンに気づき、より満足のいく人間関係を築いていくための有効な手段です。「専門家に相談するほどでもない」と感じる必要はありません。相談すること自体が、変化の始まりになります。


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8. 専門家への相談を検討するタイミング

以下のような状況では、専門家(公認心理師・臨床心理士・精神科医・心療内科医など)への相談をお勧めします。


ケアをしている:


特定の人との関係で長期にわたって消耗が続いている

断ることへの罪悪感が非常に強く、日常生活に影響している

自分が「助けなければ」という強迫的な感覚がある

関係の疲弊から、うつ症状や睡眠障害などが現れている

依存的なパターンが気になる方:


頼っている

人に頼らないと強い不安や恐怖が生じる

見捨てられることへの恐怖が日常的に強くある

感情の起伏が激しく、特定の人への依存が激しい時期と激しい怒りが繰り返される

自傷行為や、自分を傷つけることへの考えが浮かぶ

特に最後の点については、迷わず専門機関にご連絡ください。


相談窓口:

かかりつけ医・心療内科・精神科への受診

<公的な相談機関であれば、費用を抑えることも可能です>

こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556

よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)


<カウンセリングを探すためのリソース>

公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会(https://www.jsccp.jp):全国の臨床心理士を検索できます


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まとめ

本記事では、依存的な対人関係パターンの心理的背景と、自分も相手も尊重した距離の取り方について、臨床心理学の知見に基づいて解説しました。


重要なポイントを整理します。


心理的背景の理解として: 依存的な関わり方は、愛着の不安定さや幼少期の学習経験から形成されるパターンであり、「悪意」や「性格の欠陥」ではありません。見捨てられることへの恐怖が、依存的な行動の根底にあることが多い。


関わる側への理解として: 応じ続けることが依存パターンを強化する可能性があること(強化学習)、また長期的な消耗が共感疲労につながるリスクがあることを、学術的根拠に基づいて示しました。


実践的な距離の取り方として: 7つのステップ(感情の棚卸し・バウンダリーの理解・段階的な調整・共感と解決策の分離・Iメッセージ・条件付き関与・サポートネットワークの充実)を紹介しました。特に「持続的な関わり方を考える」は、「断るか関わるか」の二択ではなく、関わり方を自分でデザインするという新しい視点を提供しています。


最も大切なこととして: 「助けないことが相手の長期的な回復を支える場合もある」という逆説的な視点を持ちながらも、自分にできる範囲を超えた問題は専門家に委ねることが、双方にとって最善の選択です。


自分のニーズも相手のニーズも、どちらも等しく大切なものです。「自分を守ること」は自己中心的なことではなく、長く・誠実に関わり続けるための基盤です。


本記事を読んでご自身や身近な方の状況について心配なことがある場合は、公認心理師・臨床心理士・精神科医などの専門家にご相談ください。本記事は情報提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。


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参考文献

American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.). American Psychiatric Publishing.


Boscarino, J. A., Figley, C. R., & Adams, R. E. (2004). Compassion fatigue following the September 11 terrorist attacks: a study of secondary trauma among New York City social workers. International journal of emergency mental health6(2), 57–66.


Bowlby, J. (1980). Attachment and loss: Vol. 3. Loss, sadness and depression. Basic Books.


Figley, C. R. (1995). Compassion fatigue: Toward a new understanding of the costs of caring. In B. H. Stamm (Ed.), Secondary traumatic stress: Self-care issues for clinicians, researchers, and educators (pp. 3–28). Sidran Press.


Ghasemzadeh, R., Mahmoudalilou, M., Roudsari, A., & Bayrami, M. (2023). The Relationship between brainbehavioral systems and cluster B personality disorders by mediating dark traits of personality. Journal of Adolescent and Youth Psychological Studies (JAYPS), 4(5), 158–168. https://doi.org/https://doi.org/10.6 1838/kman.jayps.4.5.15


Gordon, T. (1970). Parent effectiveness training. (Parent Effectiveness Training: The Proven Program for Raising Responsible Children(2000)  Harmony)


Lemos, M., Vásquez-Villegas, C., & Román-Calderón, J. (2019). Invarianza del Cuestionario de Dependencia Emocional entre sexos y situación sentimental en universitarios. Revista de Psicología, 37(1), 218–250. https://doi.org/10.18800/psico.201901.008


Noor, A. M., Suryana, D., Kamarudin, E. M. E., Naidu, N. B. M., Kamsani, S. R., & Govindasamy, P. (2025). Compassion fatigue in helping professions: a scoping literature review. BMC psychology13(1), 349. https://doi.org/10.1186/s40359-024-01869-5


Rosenberg,M.B(2015) Nonviolent Communication: A Language of Life: Life-Changing Tools for Healthy Relationships(3rd ed.).PuddleDancer Press(マーシャル・B・ローゼンバーグ,安納 献(監訳)小川敏子(訳者)(2018)NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版 日本経済新聞出版)


Sindhu, B., Puri, A., Banerjee, P., et al. (2025). Construction and development of the empowerment & boundaries assessment (EBA): A tool for assessing boundary-setting and empowerment in victims of narcissistic abuse. Journal of Psychology & Clinical Psychiatry, 16(6), 264–269. https://doi.org/10.15406/jpcpy.2025.16.00843


Skinner, B. F. (1938). The behavior of organisms: An experimental analysis. Appleton-Century-Crofts.


Timofeiov-Tudose, I., & Măirean, C. (2023). Compassion fatigue in healthcare workers: A systematic review of risk and protective factors. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(5), 4114. https://doi.org/10.3390/ijerph20054114


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World Health Organization. (2019). International classification of diseases for mortality and morbidity statistics (11th rev.). https://icd.who.int/


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担当する心理士

塚越友子PhD

(つかこしともこ)

博士(教育学)・臨床心理士・公認心理師

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自殺念慮(希死念慮)を含む危機状態、家族関係、対人関係における関係性の問題を専門とし、長年改善しない悩みや生きづらさに対して、関係性の再構築を通じて日常を動かし人生を再構築するための変化を18年以上にわたり支援しています。

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