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いい人を演じて疲れてしまう人へ

いい人を演じることをやめるのか、いい人を演じ続けるのか

それが問題だ


「いい人に思われたくて、疲れてしまった…」という経験をしている人は多いかと思います。

 

カウンセリングでも

「人に嫌われるのが怖くて、職場でいい人を演じてしまう…」

 「いい人を演じていると、疲れてストレスが溜まる…」

 

という相談を受けることは多々あります。

 

私は、そういった相談に対して、いい人疲れの原因によっては、

 

「そのまま、いい人を演じ続けるというのはどうですか?」

 

「演技の仕方を変えてみるというのはどうでしょう?」

 

と提案することがあります


この提案に対して、「え?何言ってるの。もう読むのやめよう」と思ったあなたは、

 

「いい人を演じるなんてやめましょう。ありのままのあなたでいいんですよ」

 

と、やさしく論されるはずだと思っているのかもしれませんね。

 


なぜ演技をやめることではなく、いい人を続けることを提案するのかというと

それは、いい人疲れの根本原因が、いい人を演じることではないからです。


いい人疲れの1つのパターンとして、

 

 「一生懸命演じているのに結果が出ない。演じていても周囲にいい人だと思われていないのではないか…」

 

と考える方がいます。


演技を続けた方がいいパターンのいい人疲れとは、つまり、よい上司・よい部下などの期待される役割を演じようとして疲れるという意味でのいい人疲れのことをいいます。

これは、演技をすること自体ではなく、演技に対する「評価」がよくないことがストレスとなっているのです。

 

 

自分の中の「いい人像」に縛られていませんか?


コミュニケーションという点において、職場だけでなく、あらゆる集団はメンバーに何からしらの役割が与えられている舞台として見立てることができます。

 

社長役、上司役、部下役、頼れる先輩役、かわいい後輩役、お局様役…みなそれぞれに求められる役割を演じて、職場は成り立っている。

誰だって少なからず、演技をしています。あえて悪い人を演じる人もいますが、たいていは「いい人」を演じているものです。


 

 いい人を演じることが大きなストレスとなってしまうのは、

 

・期待にこたえられているか

 

・きちんと話せているのか

 

・嫌われていないか

 

・楽しませているか

 

…など、細かな演技チェックを、自分流にしてしまうからでしょう。

 

自分流の演技へのこだわりが強すぎて、その結果に納得ができていない状態です。

 

  つまり、自分が考える、「こうすれば他人から認められるだろう」ということをしているだけで、相手の評価にビクビクしているわけではありません。

悲しいことに、相手があなたを認めるのは、相手が求める演技をしたときです。


相手が期待する演技ではなく、自分が考える相手が期待する演技をしているのですから、効果が出ないのも、ストレスが溜まるのも当然のこと。

 

相手におびえているのではなく、自分の中の厳しい演出家からの注意に、ビクビクしていることに気づくことが第一歩です。

 


相手が求めていることを知ろう


いい人を演じてしまう人に、おすすめしているのは、「左側の台詞」という、次のようなメンタルトレーニングです。

 

 ノートを開いて、左側のページに相手が実際に言った台詞、右側のページに自分の解釈(台詞を自分がどう受けとめたか、どう感じたか、どういう言動を起こしたか)を書いていきます。

 

 たとえば、「君はとても仕事が早くていいね」と上司に褒められたら、ノートの左側にそのまま台詞を書きます。

 

その場合、たいていノートの右側には、「仕事が早くていいねと褒められた。うれしい」などと書くのではないでしょうか。

 

ところが、なかには

 

「早くていいねと言われたけれど、クオリティは褒められていない。きっと自分の仕事は雑なんだ。早くてもクオリティの高い仕事をしなくては!」

 

といったことを書く人もいます。

 

 

 

左側の台詞と、右側の解釈にズレが生じていますね。

 

あなたは実際に、早くてしかもクオリティの高い仕事をしているのかもしれません。

 

それでも、上司に

 

「君はやはり、仕事が早くていいね」

 

と言われることも、あり得るでしょう。

 

すると、「まだ雑なんだ…。もっとちゃんとしなくては!」と、自分を追い込んでしまうのです。

 

左は「事実」のままですが、右は解釈を越えて、「妄想(あえて使用しています)」になってしまいます。

 

ここで、ノートを見返してみましょう。

 

左側の上司の言葉を見てみると、「早い仕事をしてほしい」というシナリオが上司から手渡されている状態なのに、それを無視して自分で勝手にシナリオを書き換えています。

 

上司に合わせているようで、「クオリティの高い仕事ができる部下」という、自分の理想が理解されないと嘆いているのです。

 

これではいくら頑張って「いい人」を演じても、効果がありません…。

  

自分がこうありたいという「いい人像」を演じるのではなく、事実に基づいて、相手に求められている「いい人」を演じていくこと。

 

そのためには、事実と自分の認識のズレに気づき、「相手が求めていることは何か」を知ることが大切なのです。

 

ズレを認識し、相手の望むものを正確に読み取る技術を身につければ、きちんと評価もされるようになるでしょう。

 

余計な演技をしなくてもいいので、気持ちもラクになりますよ。



ただし、その集団に所属するうえで、当たり前の役割を演じるという範囲内でのお話です。いい人を演じて疲れる人の中のもう一方のパターンである、過剰にいい人でいようとして、もはやだれも求めていないのにいい人でいないといけないととらわれてしまっている場合には、この方法だけではあまりうまくいかないでしょう。

 

 

 

適切な範囲内での役割としての「いい人を演じて疲れてしまう…」という心あたりがある人は、ぜひ取り入れてみてくださいね。

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