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喧嘩が絶えない夫婦・カップルにおすすめ−−21分間のワーク

 今年もあとわずか。クリスマスやお正月、家族でカップルで過ごす時間も増えますね。楽しみな方はいいのですが、逆に多くの時間を一緒に過ごすことが苦痛な関係にある方にむけて、研究で証明されているちょっとしたワークを紹介します。



 アメリカの夫婦120組を対象に2年間の追跡調査をし、21分間のワークが、夫婦関係の質の維持に役立ったという研究です(Finkel et al.,2013)。

 21分のワークは、感情の再評価という方法と観察者の視点を持つという方法の2つを合わせた心理的なワークです。

 感情の再評価とは、自分のネガティブな感情をもたらした状況の意味を再度評価することで、より肯定的・建設的にその状況を捉え直し、ネガティブな感情を軽減することができる(Gross, 2002)という感情マネジメントの方法です。

 再評価する際に、観察者の視点を取ることがポイントです。通常私たちは、自分の視点から物事の意味を推測・判断・評価しますが、その判断や評価は常に正しいとはいえません。観察者の視点とは、第3者の立場で状況の意味を解釈することで、自分と他者両方の視点から状況を判断・評価することで、その結果ネガティブな感情が軽減します(Ray, Wilhelm, & Gross, 2008; Kross, Ayduk, & Mischel, 2005)。さらに観察者の視点にたつことができれば、自分と相手の両方をみつつ、両者にとって最善の道はどこだろうか?と考えることができます。古典的な認知療法のワークにバルコニーから眺めるというワークがありますが、これに当たります。

 つまり、この21分間のワークは、お互いに自分視点で衝突してしまう喧嘩の場面において、観察者の視点を持って感情の再評価をすることで、自分の感じている相手への怒りや憤りを軽減し、怒りのままに相手に反応するのではなく、自分も相手も幸せになるための行動を考え、その行動をとることができるようになるというワークなのです。そして結果として、夫婦関係の質の維持ができるというもの。

 ワークの肝は感情的再評価と観察者視点であるため、このワークは他人との葛藤場面全般にも効果があると思われます。


実際のワークの前に、自分視点や観察者視点という考え方がわかりにくいと思いますので図解をしておきますね。


自分視点(自分)

自分視点(相手)


観察者視点

実際のワーク それぞれ5〜7分くらい考えましょう

1 パートナーとの意見の相違について考えてみてください。このパートナーとの意見の相違を関係者全員にとってベストであることを望む中立的な第三者、つまり中立的な視点から物事を見る人の視点から、あなたのパートナーとの意見の相違について考えてみてください。その人は、この意見の相違についてどう考えるでしょうか?その人は、そこから生まれる良いことをどのように見出すだろうか?
2 恋人や夫婦の交流の中で、このような観察者の視点に立つことが役に立つと感じる人もいます。しかし、ほとんどすべての人が、常にこの観察者の視点を持つことは困難だと感じています。パートナーとの関係において、特にパートナーと意見の食い違いがあるとき、この観察者の視点を持とうとする際に、どんなことがハードルとなりますか?
3 観察者的な視点 を持つことが難しいが、観察者の視点を持てる人はうまくいっています。これからの4ヶ月間、パートナーとのやりとり、特に意見の食い違いがあるときに、この観察者的な視点を持つように頑張ってみてください。今後4ヶ月間、パートナーとのやり取りの中で、どのようにすればこの視点を持つことに最も成功するでしょうか?この視点を持つことは、あなたの関係における意見の相違を最良のものにするために、どのように役立ちそうですか?

 自分の視点を超えることは、自分の価値観やルールを一端わきにおいて、その上で、相手の視点にたちつつ、自分と相手という関係性の視点にも立ちつつという作業です。非常に難しいとは思います。まず多くの人は、自分が本当に何をどう感じているのか?どんなルールでその出来事や相手の意見を判断しているのかよくわかっていません。自分のルールに気づくことがまず大切です。

 次に、自分のルールではなく、相手の視点で相手がどう思っているのか?を考えてみます。こちらも自分を脇においやって考えるということに慣れていないと、自分視点でしか相手を見ることができず、自分視点で考えていること以上の見え方で考えられないかもしれません。これも訓練ですので、ワークを繰り返すことで、上達していきます。


 残念ながら、パートナーシップの質は、年月を経るにつれ、低下することが繰り返し証明されています(例 VanLaningham et al.,2001)。一方で、パートナーシップの質は、幸福と健康に寄与します。紹介した論文で提案されているワークは難しいですが、パートナーシップの質を維持できますので、ぜひトライしてみてください。

 観察者視点をとる練習は、人間関係や自分の感情のマネジメントにもとても役に立ちますので、この機会に練習することをおすすめします。


参考文献

Finkel, E. J., Slotter, E. B., Luchies, L. B., Walton, G. M., & Gross, J. J. (2013). A brief intervention to promote conflict reappraisal preserves marital quality over time. Psychological Science, 24(8), 1595-601.

Gross, J. J. (2002). Emotion regulation: Affective, cognitive, and social consequences. Psychophysiology, 39, 281–291.

Kross, E., Ayduk, O., & Mischel, W. (2005). When asking “why” does not hurt: Distinguishing rumination from reflective processing of negative emotion. Psychological Science, 16,709–715.

Ray, R. D., Wilhelm, F. H., & Gross, J. J. (2008). All in the mind’s eye? Anger rumination and reappraisal. Journal of Personality and Social Psychology, 94, 133–145.

VanLaningham, J., Johnson, D. R., & Amato, P. (2001). Marital happiness, marital duration, and the U-shaped curve: Evidence from a five-wave panel study. Social Forces, 78,1313–1341.

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